硝子体(2)
①硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)
網膜の血管から出血した血液が硝子体の中に入りこんだものを、硝子体出血といいます。
【原因】
原因はさまざまで、幼児では網膜芽細胞腫、青壮年では糖尿病やイールス病、中高年では糖尿病や動脈硬化からくる網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性症などが原因で異常にもろい血管(新生血管)ができて出血する場合があります。そのほか、網膜剥離や網膜の血管の炎症や腫瘍、外傷でもおこります。
【症状】
突然に始まる飛蚊症や、急激な視力低下を訴えます。なかには血液の赤い色がみえたりすることもあります。
【診断】
眼底検査で硝子体のなかの出血を確認します。少量の出血であれば眼底透見可能な場合もありますが、大量出血で眼底透見不可能の場合には超音波検査を行います。
【治療・予防】
原因となった病気の治療を行ないます。出血が新しければ、なるべく頭を高くした姿勢で安静にして止血薬を投与します。なかなか出血がひかないときや超音波検査で網膜剥離が発見された場合には硝子体の手術をします。また、出血の予防として、異常にもろい血管(新生血管)ができる前にレーザー治療を行なう場合があります。
②飛蚊症(ひぶんしょう)
目の前に蚊が飛んでいるようにみえるため、飛蚊症と呼ばれています。明るい所や白い壁を見つめた時、目の前を”黒い点”や”糸くず”のようなものが動く症状で、ときには水玉のように透明なものもあり、これらはみな視線を動かすと一緒に移動してみえます。目を擦ったり、瞬きしても消えません。
【原因】
本来透明なはずの硝子体に濁りが生じ、その影が網膜に映ることによって起こります。この濁りの原因には生理的なものと病的なものがあります。
1.生理的飛蚊症・・・胎生期に消失すべき硝子体の中の組織がそのまま残って濁りとなっているものです。
2.硝子体剥離・・・飛蚊症の原因として最も多いものです。硝子体と網膜は本来ぴったりとくっついていますが、ゼリー状の硝子体が加齢により液化することや、強度近視や眼球の打撲が原因で収縮することにより、硝子体と網膜が剥がれてしまいます。その剥がれた部分が濁りの原因となります。
特に眼球後部で発生するものを後部硝子体剥離と言います。
3.網膜裂孔・網膜剥離・・・前駆症状として飛蚊症が起こります。硝子体剥離が生じるときに一緒に引っ張られた網膜に穴が開いてしまうことがあり、これを網膜裂孔と言います。この場合、放置しておくと網膜剥離に進展し視力障害や視野障害が起こります。
4.硝子体出血・・・硝子体内に血液が入り込む事により濁りが生じます。糖尿病や高血圧などの眼底出血しやすい病気が原因で発生する場合や眼球打撲をした時にも起こります。
5.炎症・・・ぶどう膜炎など、目の中の炎症が原因で硝子体に混濁が発生し飛蚊症が起こります。
【診断・治療】
診断は、瞳孔を目薬で開いて、眼底検査を行ないます。
もっとも多いものは、加齢にともなう飛蚊症で、硝子体中に濁った線維が出てくる場合や、後部硝子体剥離が原因で発生しているものです。この場合は老化現象の1つで、病気ではないので、とくに治療をする必要はありません。また、生理的飛蚊症が原因の場合も治療は必要ありません。しかし、網膜裂孔や網膜剥離が原因の場合には治療が必要となります。網膜裂孔だけのときに発見されれば、外来でレーザー治療を行なうだけで良い事もありますが、網膜剥離に進展している場合には入院して手術が必要となります。
そのほか、硝子体出血では原因疾患の治療や、ぶどう膜炎では炎症を抑える治療を行います。飛蚊症を初期症状とする病気は、いずれも早期治療が重要となります。飛蚊症を自覚したら、なるべく早く眼科を受診し、精密検査を受けて、治療が必要なものかどうかを検査することが大切です。
また、たいていの飛蚊症は無くならないので、医師の診断で治療の必要性がないとされた場合には、あまり気にし過ぎないのがよいでしょう。